電気の基礎知識

 電気の正体は、現代の物理学では金属元素の自由電子とされています。この自由電子が移動することにより、電気エネルギーが発生しています。

 

 

 

 

 

電流

 電流は、マイナスの電気( 電荷 )を持つ電子が原子の中から飛び出して移動することで発生する。

  マイナスの性質を有する電子は、プラス極に引き寄せられるが、この電子の移動を電流という。 電流はプラスからマイナスに流れていると思われているが、 実はマイナスからプラスに向かって流れている。このような誤りは、アメリカのベンジャミン・フランクリンの勘違いから始まった。1897年、イギリスのトムソンによって電子の正体が明らかになった時には、誤った説がすでに世界中に広く浸透していた。 この矛盾によって電気の説明や計算に問題が生じることはないため、今日では「電子はプラスの方向に流れ、その反対の流れを電流とする。」という約束事になっている。


● 直流

 

 乾電池やバッテリのように電圧が一定で、電流の流れる方向が変わらないものを直流という。直流には、直流発電機(交流電動機で駆動)で直流を出力させるもの、シリコン整流器と電圧調整器で直流を出力させるもの等がある。交流を整流したものは、完全な直流ではなく、多少の波が残るため、脈流と呼ばている。乾電池等の直流は平流といい、直流を区別する場合に用いられる。

 


● 交流

 

 時間に対して、電圧の大きさと電流の流れる方向が周期的に変化するものを交流という。交流は、変圧器によって容易に電圧を変えることができる。1つの山と谷のカーブの波形を1サイクルといい、1秒間のサイクル数を周波数という。周波数の単位には、ヘルツが用いられ、この波が1秒間に50回あれば50Hz、60回あれば60Hzという。

 


 一般家庭には、2本の線を用いて100Vの電気を配電している。このような交流は、単相交流という。単相交流3つを一定間隔にして3本の線で配電するものは、三相交流という。電動機を使用する工場等では、200Vや400Vの三相交流が使用されている。我が国の電源の周波数は、静岡の富士川を境にして、おおむね東日本が50Hz、西日本が60Hzである。 東西で周波数が異なるのは、明治初期に周波数が違うドイツ製とアメリカ製の発電装置を別々に輸入したことで始まったといわれている。


● 交流の実効値

 

 交流電圧の瞬間の値を瞬時値といい、瞬時値の最も大きなものを最大値という。直流は、電圧が一定のため、平均値によって電気的効果を求めることができる。しかし、交流に平均値を用いると正の半サイクルと負の半サイクルによって値がゼロになってしまう。このため、交流の電気的効果を表わすためには別の方法を用いる必要がある。そこで考え出されたのが実効値である。 たとえば、直流電流によって電球を点灯し、ある明るさを得られたとする。次に同じ電球に交流電流を加えて直流電流と同じ明るさになるまで電圧を上げると、直流電流の電気的効果と等しくなる。この時の値を交流の実効値といい、次の式で求めることができる。

 

一般家庭で使用されている100Vの交流や交流用電圧計、電流計等は、実効値で示されている。最大値は、次の式で求めることができる。交流電圧100Vは、この式により電圧0Vから141.4Vの振れ幅で変化していることが分かる。

 

●電圧

 水は、高い所から低い所に向かって流れる。電流も同じで、高電位から低電位に向かって流れる。電流を流すためには電気の圧力が必要で、水位に相当する電位の差を電位差という。電流を流す力である電位差は、一般に電圧と呼ばれ、単位にはボルト(V)が用いられる。

 

●抵抗

 

 電気回路に電流が流れる時、この流れを妨げようとする作用が起きる。 この作用を電気抵抗又は単に抵抗といい、単位にはオーム(Ω)が用いられる。電気回路に使用される抵抗器は、一定の抵抗値を有するもので、Resistanceの頭文字Rで示される。 電気回路の抵抗の接続には、直列、並列、直並列があり、これらを1つの抵抗として換算することを抵抗の合成といい、この値を合成抵抗という。

 

直列接続の合成抵抗

 直列接続の合成抵抗は、それぞれの抵抗を加えて求めることができる。

 

並列接続の合成抵抗

 並列接続の合成抵抗は、それぞれの抵抗値の逆数を足して、それを更に逆数にして求めることができる。

 

 

直並列の合成抵抗

 直並列の合成抵抗は、直列接続と並列接続の計算式を組合せて求めることができる。

 

 

●オームの法則

 回路に流れる電流の大きさは、電圧に比例し、抵抗に反比例する。これを図のような回路で実験した場合、Bの回路はAの2倍の乾電池(電圧)によって明るさが2倍になる。Cの回路は、Aの2倍の豆電球(抵抗)によって明るさが1/2になる。ドイツの科学者オームがこの法則を発見したため、オームの法則と呼ばれている。電流、電圧、抵抗の関係は、次の式で表すことができる。

 


基準の明るさ     Aの2倍の明るさ    Aの1/2の明るさ

電圧、抵抗、電流の大きな数値や小さな数値には、次のような単位が使用されている。

  1,000V=1kV  10,000V=10kV

  1,000,000Ω(100万オーム)=1MΩ

  1A=1,000mA  0.001A=1mA

 

    ●導体と不導体

 

 物質には、電気を通しやすい導体と電気を通しにくい不導体がある。不導体は、物質内の原子核と電子の結びつきが非常に強く、物質の抵抗値が高いために電気が流れにくい。 物質の抵抗は、長さに比例し、断面積に反比例する。物質の長さを2倍にすると抵抗は2倍になり、断面積を2倍にすると抵抗は1/2になる。

 

導体(電導体) 

 導体は、電気抵抗が非常に小さく、電気を非常によく通す。

  銅、鉄、アルミニウム、金、銀、黒鉛、炭素

 

不導体(絶縁体) 

 不導体は、電気抵抗が非常に大きく、電気をほとんど通さない。

    1.固体(ゴム、雲母、磁器、ガラス、セラミックス、合成樹         脂)

    2.液体(鉱物油、純水)水に海水等の不純物が溶け込むと電                   気をよく通す。

    3.気体(空気)空気に強い電圧を加えた場合は、放電現象が                     起きる。

 

●電力と電力量

 電気エネルギーの単位時間当たりの仕事量を電力という。電力は、電気エネルギーを消費することなので消費電力とも呼ばれる。電力の単位にはW(ワット)を使用し、1,000Wは1kW(キロワット)と表す。たとえば、電球は100V60W等と表示されているが、100Vの表示は100Vの電圧を使用することを表し、50Wは電球の消費電力を表している。

 電力は、電圧と電流の積で求めることができる。電圧は、電流と抵抗の積であるため、電流の2乗と抵抗の積によっても電力を求めることができる。一般家庭で家電製品を使い過ぎると、ブレーカが落ちることがある。電力会社との契約電流を30Aとした場合、一般家庭の電圧は100Vであるため、 電力の許容量は3,000W(30A×100V)になる。したがって、家電品の消費電力を確認し、これを超えないように使用しなければならない。

 

 電力 = 電圧 × 電流

 

<例題>

   電圧が100V、電流が2Aの時の電力

   電力 = 100 × 2= 200W

 

 電力量は、ある時間内に消費した電力の総量を示すもので、 電力と使用した時間の積によって電力量を求めることができる。電力量の単位には、Wh(ワットアワー)又はkWh(キロワットアワー)が使用されている。

 

  電力量(Wh) = 電力 × 消費した時間

 

<例題>

   800Wの電動機を2時間使用した時の電力量

    電力量 ( Wh ) = 800 × 2 = 1,600Wh = 1.6KWh

 

●ジュール熱

 電熱器は、ニクロム線の中の電子が原子や分子の抵抗とぶつかって発熱するもので この抵抗による発熱作用をジュール熱という。クレーンの電動機に定格荷重以上の負荷が掛かると、電動機に規定以上の電流が流れ、巻線の温度が異常に上昇して焼きつくことがあるが、この現象もジュール熱によるものである。イギリスのジュールによって発見されたため、単位には J (ジュール)が用いられる。ジュール熱は、消費した電力量と等しいため、次の式で求めることができる。

 

 ジュル熱 ( J ) = 電力量 = 電力 × 消費した時間

 

                         資料集に戻る

                                                                               ホームに戻る