プリント基板の基礎知識

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プリント基板は、テレビやパソコン、自動車やカーナビなど様々な電子機器に使われており、電子機器にはなくてはならない主要部品です。プリント基板自体は目にすることが比較的多いものの、その基板自体がどのような役割を持っているのか、どのようにして作られるのか、だれがどのようにして電子回路を設計するのかなど、プリント基板は非常に身近な存在であるにも関わらず、その実態をご存知の方は非常に少ないのではないかと思います。

このページでは、プリント基板の基礎知識としてプリント基板に関わる様々な情報や知識をご紹介していきます。プリント基板の役割はもちろん、その豊富な種類や電子機器によって使い分けれられる基板の数々、そして基板ができあがるまでの工程など、電子機器がお好きな方はもちろん、さほど興味がない方でもぜひ知っておいて損はないという情報を選りすぐりで更新していきます。

そもそもプリント基板ってなに?

プリント基板とは、あらゆる電子機器に必ず使用される主要部品の一つで、様々な電子部品で回路を作成する際にその部分同士を固定して配線するための部品の総称です。一般的には、絶縁体の板に集積回路(IC)や抵抗器、コンデンサやトランジスタ等の部品を固定し、 その部品間に銅箔で配線を張り付けた構成になっています。皆さんもパソコンのメモリ追加などで、緑色の板に集積回路などが固定されている部品をご覧になられたことがあるかと思いますが、これがまさにプリント基板で、電子回路の組立にはなくてはならない重要な部品です。

プリント基板の種類や分類の項目にて詳しく解説しておりますが、プリント基板には様々な種類があり、使用する電子機器の種類、使用される環境、設置されるスペースなどの要因によって素材や特性が選択され実装されます。もちろん電子機器となりますので、例えばパソコンなどに組み込まれるプリント基板は高速の動作が求めらるわけで、それを前提に設計や製造を行わなければなりませんし、その処理速度を出すためにどのような素材を用いなければならないかなど、プリント基板一つ作るだけでも様々な要因・要素が絡んできます。プリント基板は、英語でPrinted Circuit Boardと呼び、頭文字をとってPCBと呼びます。

プリント基板の必要性

上述のとおり、プリント基板は回路を構成する電子部品同士の電気的な接続が主な目的であり、各部品を機械的に配置して固定し、スペース的にも効率よく配線を接続することができるため、電子製品の小型化や生産性の向上、コスト削減など様々なメリットがあります。また、一昔前に主流だった半田付けによる配線接続とは異なり、一度プリント基板を作成すれば、同じ電子回路の製品をスピーディーかつ、同一の品質で組み立てることができることができます。

プリント基板は、プリントと書きますが実際に回路をプリントするわけではありません。プリント基板作成の作業工程のなかで、保護層印刷などの工程こそありますが、なぜプリントと呼ばれているかは諸説があり、その点はさほど重要ではありません。プリント基板の種類と分類の項目にて詳しく説明いたしますが、一般的にプリント基板は、絶縁板に銅箔で配線を施した構造になっており、複数の基板を張り合わせた多層基板や層間接続をして導体層を積み上げるビルドアップ基板が主流です。

プリント基板の構造・構成

 プリント基板の最大のメリットは、電子回路の配線を1本1本接続する必要がなく、誤配線の可能性が低い、短時間での量産性に優れているという点が挙げられます。そのベースになる構成部品が、主に電気を通さないエポキシ樹脂やフェノール樹脂でできた絶縁体基材、そして電気を通す部分は銅箔などの伝導体を用いて、基板上に配線パターンが書かれます。この絶縁体基材を層と呼び、両面基板や配線2層+電源2層の4層基板などが一般的ですが、大規模なデジタル製品や高密度が最優先されるものは、12層以上にもなる多層基板もあります。

 

プリント基板とプリント回路の違い

プリント配線板

プリント配線板とは、電気回路の配線を絶縁体からなる板の表面や内部にプリントした基板のことで、部品を装着する前の状態の生板を指します。これに対して、コンデンサやスルホールなどの各種部品を装着した状態のものをプリント回路板またはプリント基板と呼びますが、一般的には生板も含めた総称としてプリント基板と呼ばれます。

類似の呼び方で電子回路基板と呼ばれるものがありますが、これはプリント配線板およびモジュール基板の総称です。

配線板の品種区分
プリント配線板 リジッドプリント配線板 片面プリント配線板
両面プリント配線板
多層プリント配線板
ビルドアップ多層配線板など
フレキシブルプリント配線板 片面フレキシブル配線板
両面フレキシブル配線板
多層フレキシブル配線板など
フレックスリジッド配線板  
モジュール基板 リジッドモジュール基板 BGA基板
ビルドアップモジュール基板
フレキシブル系モジュール基板 TAB基板
COF基板など
セラミック基板  
 

プリント基板の種類と分類

プリント基板の種類

プリント基板の種類を大別すると、
(1)紙フェノール
(2)ガラス・エポキシ
に分けることができます。

紙フェノール基板は、紙基材を油脂を含んだフェノール樹脂で固めて作られています。
電気的特性や耐熱性ではガラス・エポキシに劣りますが、価格が安いため民生用に多用されており、海外を含めた生産量は最大です。 ガラス・エポキシ(通称ガラエポ)基板は、グラス・ファイバで織った布をエポキシ樹脂で固めて、強度と絶縁性、難燃性をもたせたもの、高周波や高信頼性が求められる回路に使われます。

プリント基板の材料はこのほかにもいろいろあります。紙とガラス基材を混合したコンポジット基板、プラスチック・フィルムを基材として折り曲げが可能なフレキシブル基板などがあります。
また,ハイブリッドICやSAWフィルタのようにセラミック基板が使われることもあります。

基板の種類 特長
紙フェノール基板 紙にフェノール樹脂を含浸させた材料で製造したプリント基板です。ベーク基板とも呼ばれています。加工性が高く、コストが低いことが特長です。主に片面基板に用いられ、民生用電子機器などに使われています。
紙エポキシ基板 紙にエポキシ樹脂を含浸させた材料で製造したプリント基板です。紙フェノール基板に比べて、耐熱性や吸湿性、絶縁抵抗、高周波特性などの点で優れています。ただし、これらの特性は、ガラス・エポキシ基板には劣っており、紙フェノール基板とガラス・エポキシ基板の中間的な特性という位置付けです。主に片面基板に用いられており、具体的な用途としては、民生用電子機器が挙げられます。
ガラス・コンポジット基板 ガラス布( クロス)とガラス不織布を混ぜ合わせた基材にエポキシ樹脂を含浸させた材料で製造したプリント基板です。ガラス・エポキシ基板とほぼ同等の電気特性を有していますが、機械的な強度や寸法の安定性は劣ります。両面基板に多く使われています。
ガラス・エポキシ基板 ガラス布( クロス)にエポキシ樹脂を含浸させた材料で製造したプリント基板です。寸法変化が小さく、高周波特性や絶縁抵抗が高いものの、コストは比較的高くなります。両面基板のほか、多層基板にも使われています。パソコンや民生用電子機器、OA機器などに使われています。
テフロン基板 テフロン樹脂を絶縁材料に用いたプリント基板です。高周波特性に優れているため、数百MHz~数十GHzの信号を扱う電子機器に用いられています。
アルミナ基板 酸化アルミニウムと粘結材を混ぜ合わせて焼結させたグリーン・シートを用いたプリント基板です。セラミック基板とも呼ばれおり、高周波特性に優れていることが特長です。欠点は、コストが高いことです。マイクロ波機器や無線通信の基地局などに使われています。
LTCC基板 低温同時焼成セラミック(LTCC: Low Temperature Co-fired Ceramics)の工法を使って製造した多層基板です。酸化アルミニウム(アルミナ)を材料に使った多層基板では1500℃と高い温度で焼成する必要があるため、低融点の銅や銀を使った配線パターンの作り込んだ状態で同時焼成することができませんでした。LTCC基板は、酸化アルミニウムにガラス系材料を加えることで約900℃と低い温度で焼成することを可能にしました。これにより、銅や銀といった低融点材料の配線パターンを作り込んだ状態で同時焼成することができます。高周波モジュールや半導体パッケージなどの基板として使われています。
 

構造や特性による分類

基板の種類 特長
片面基板 配線パターンの印刷や電子部品の実装が片側のみに施されているものです。コストを低く抑えることを重視した電子機器に主に採用されています。
両面基板 配線パターンの印刷や電子部品の実装が両面に施されているものです。片面基板に比べるとコストは高いものの、低コストの電子機器に主に採用されています。
多層基板 配線パターンを印刷した基材と絶縁体を交互に重ねたプリント基板です。片面基板や両面基板では収容しきれなかった配線パターンを内部の層に作り込むことができるため、電子部品の実装面積を高められます。パソコンや小型AV機器などでは、主に4~8層の多層基板が使われています。大型コンピュータでは、層数が10層を超えるプリント基板が使われています。
フレキシブル基板 ポリイミドなどのプラスチック・フィルムを用いることで、大きく変形させることが可能な柔軟性を持たせたプリント基板です。折り畳み型携帯電話機の上側筐体と下側筐体の接続や、プリンタ・ヘッドとの接続など、折り曲げる必要がある個所や、可動部との接続に使われています。
ビルドアップ基板 コア基板の上に、薄い絶縁層と導体層を順に積み上げる工法で作成したプリント基板です。層間は、レーザーなどで開けた微小なビア・ホールを使って接続します。極めて高い実装密度が得られるため、小型化が求められる携帯電話機や小型AV機器、モバイル・パソコンなどで採用されています。
 

インピーダンス整合とは

高周波回路ではインピーダンス・マッチングが重要

  段差などをなくしたバリアフリーの住宅は、部屋から部屋へスムーズに移動できるように、ドライバ回路の出力インピーダンスとレシーバ回路の入力インピーダンス、それらを結ぶ伝送路の特性インピーダンスがそろっていると、信号は反射することなくスムーズに流れ、出力も最大になります。しかし、現実にはそれぞれのインピーダンスには差があるため、伝送路にインピーダンス・マッチング回路を挿入して、インピーダンスをそろえます。

インピーダンス・マッチングにはトランスなども使われますが、簡便で効果的なのはインダクタ(L)とコンデンサ(C)を組み合わせたLC回路の挿入です。これはLCフィルタの1種で、ある周波数帯を抵抗成分として作用させることで、適切なインピーダンス・マッチングを図るのです。

高周波回路においては、回路図には現れないインダクタ成分(寄生インダクタンス)やコンデンサ成分(寄生キャパシタンス)の対策も必要になります。ここにも、インダクタとコンデンサの相反する性質がたくみに利用されます。寄生インダクタンスにはコンデンサを直列挿入、寄生キャパシタンスにはインダクタを直列挿入して除去します。

電子回路というのは、突き詰めていえばインピーダンスのネットワーク。電子回路のインピーダンスは、電子部品の周波数特性や配置、配線パターン、部材の材質なども複雑に絡んでくるため、設計にあたってはネットワーク・アナライザという測定器も援用されています。

微弱な信号を取り扱う携帯電話やスマートフォンなどの高周波回路では、インピーダンス・マッチングはきわめて重要です。

 

ガーバーデータとは

ガーバーデータ

  ガーバーデータとは、プリント基板を製造するためのデータで、基板の設計者と製造者の間でやりとりされます。 通常DesignSparkPCBやEagleといったのCADソフトによって設計・出力され、このファイルを元に製造業者側はプリント基板を製造します。

 「ガーバー」「ガーバーデータ」「ガーバーフォーマット」など色々な呼び方があるが、どれも意味としては同じです。ガーバーは元々基板のアートワークフィルムの作画に用いられるグラフィック・フォーマットでした。フィルム作画機メーカの Gerber System社の独自規格でしたが業界標準として広く普及したため、1979年にEIA (米国電子工業会)で RS-274D として規格化されました。現在、量産用の 基板フィルム作成には必ずと言ってよいほど、このガーバーフォーマットが用いられています。

  ファイル構造の視点からみると、ガーバーフォーマットは、RS-274X(拡張ガーバーフォーマット)とRS-274-D(標準ガーバーフォーマット)の2つに分類することができます。

  違いはDコードを含むか含まないかので、Dコードとはサイズ情報(ポイント寸法、線幅)・形状を示すコードで2桁以上の数値のことを指します。簡単に言ってしまうと、RS-274Xは画像データを全て内包することができ、外部ファイルを必要としません。逆にRS-274-Dは、サイズ情報が記述された外部ファイルが必要になります。そのため、RS-274Dは正しい組合せでファイルを受け渡しをしないと、正しく再現出来なくなってしまいます。当然のことながら、現在の主流は拡張ガーバーです。

   見分け方は簡単で、RS-274Xの場合、先頭付近に「%」で区切られたパラメーターが何行か並んでいるはずです。 このパラメーターがない場合は、RS-274-Dですので外部ファイルが必要になります。

RS-274Xでの受け渡しはトラブルが少なく、ガーバーの知識がさして必要ではありません。一方、RS-274-Dを使う場合は、正しくデータを再現するために設計者と正常者双方に正しい知識が必要になります。

 

プリント基板設計ソフトについて

基板設計ソフト

kicad

回路図エディタと基板のデザイン両方ができるオープンソースな基板設計ソフト。kicadの書籍もトランジスタ技術から出版されています。利用できるOSが幅広く、Windowsはもちろんのこと、OSX、Linuxでも使えます。

Design Spark PCB

回路図エディタと基板デザイン両方が使えます。RSコンポーネントからダウンロードできますが、Windowsの環境でしか使えません。操作は非常に簡単で直感的ですが、細かな設定機能がありません。

CADLUS PCB

二ソール社が提供する日本製のプリント基板設計CAD。プリント基板アロケートドットコムではフリー版「CADLUS PCB」を無償配布しており(要会員登録)、「CADLUS PCB」で設計したデータでそのままご発注いただけます。
会員登録は無料ですので、他社製品をお使いの方もアートワークが初めてという方でもお気軽にお使い下さい。

OPUSER 

使いやすく機能豊富と評判な回路図と基板設計ができる有償版ソフト。

他にも、有料の基板設計CADだと、OrCADやAltiumなどいろいろあります。