27mmのスピーカーの修理
あまり治すことはないと想いますが、治るものは治して使う!の精神で当院のドクターM氏が挑戦しました。
入院日:H28.4.17 修復完了日:H28.4.22
新幹線のおもちゃが入院してきた。
破損の程度はかなりひどく基本的に動作しないばかりではなく内部の部品がとんだり、車輪が1個なくなっていたりとかなり手荒な扱いを受けている様子である。
分解をしなければ、傷がつかないはずの部分があるのに、一切手を加えたことはないという自己申告である。
音が出ないという申し出なので修理のための分解後、スピーカーを診断する。
1.外見上の破損個所
筐体を分解してみるとスピーカーは接続線が完全に切断されていて、さらにスピーカー後部のマグネットが分離している。本来はスピーカーは筐体に固定されているはずだが、固定がなくなっていてスピーカーが筐体の内部を転げていたようである。
さらにスピーカーのフレームはあちらこちらが割れていて部分的にはなくなっている部分もある。
筐体内部にはフレームの割れた破片が見当たらない。
破損個所は次のとおり
マグネットの分離、脱落(画像1)
マグネットが外れるとは考えたことがなかった。
単に接着剤でフレームに張り付けてあるだけだった。
フレームの破損(画像2)
奥の黒く見える部分が残っているフレーム。黄色の点線が元々のフレームの上端。
どうやったらここまで破壊できるの?
2.診断により発見された故障個所
基本的な動作が可能かどうかを判断するためボイスコイルの端子で、両端の導通を確認するが導通なし。→ボイスコイル系統の配線破断。
ボイスコイル自体には大きなゆがみは見られないが、マグネットのスリットの中にうまく収まるかどうかを確認。特に抵抗もなく収まることを確認。
3.故障個所追跡
① ボイスコイルの導通がないことからボイスコイルの引き出し線を端子から外して直接抵抗値を確認。→導通なし。端子には複数回ハンダ付けを行った後を確認。
② 破断個所を確認するためボイスコイルをコーン紙ごとフレームから分離。(画像3)
③ ボイスコイルを解くためコーン紙から分離(画像4)
いずれもゴム系の接着剤で軽く接着されていただけだったので簡単に分離できた。
ボイスコイルを詳細に観察するが外見上の破断個所は見当たらない。
ボイスコイル巻き線を一方の引き出し部分から解いて行くと約1周した部分で小さな傷があり破断していることを確認。導通を確認するが導通なし。
もう一方の巻き線を同様に解いて行くと同じ場所で破断していることを確認。破断部分から導通を確認する。導通あり。ボイスコイル本体は生きている模様。
引き出し線を確保するため更に1周づつ解く。計4周解いたことになるがそもそもボイスコイルのインピーダンスはいい加減なので影響は少ないと判断し、修復を続ける。
4.修復
① 修復を必要する部分を清掃
② ボイスコイルをコーン紙に接着
③ 引き出し線をコーン紙に固定(ボンドGPクリアーで接着)
④ コーン紙をフレームに固定(接着)
⑤ ボイスコイル引き出し線をフレームの端子にハンダ付け(ウレタン被 覆線のためしっかり加熱)
⑥ マグネットとボイスコイルの接触に注意しながらマグネットとフレー ムを組み立て。(接着)⑦ フレームの破損個所からの破損部分がないためフレームの修理は行っ ていない。
5.確認
ATH002のスピーカー確認機能を使用して音が出ていることを確認
6.ボイスコイルの巻き線をほどいたのでインピーダンスは狂っている筈だが動作するので修復できたものと判断、修理完了とする。