3.電力計算

 

ある負荷でどのくらいの電力が消費されているか、ある負荷を動かすためにはどの位の供給電力が必要か、と言う事を把握するためには電力を計算する必要があります。

消費される電力とは電気(電子)回路を動作させるために必要なエネルギーの量でW(ワット)と言う単位で表されます。

右の回路で抵抗 R が消費するエネルギーはR に掛かる電圧(V)と R を通過する電流( i )の積と考えられますので消費される電力(P)は

 P = V x I

になります。

 

オームの法則からV

V = E = I x R

ですの

P = ( I x R ) x I = I2 x R

P = E x ( E ÷ R ) = E2 / R

とも表すことが出来ます。

上の計算から分かる通り、電流の2乗で電力が増加していきます。

特にトランジスタ回路では回路に流れる電流が比較的大きいため、合成抵抗の場合よく検討しないと抵抗の耐電力を超えて焼損してしまう可能性があります。

話は飛びますが、電池が使えるかどうかはこの原理で判断できます。

電池を使用する場合の回路は左のように考えられます。

 

電池の内部では起電部分と内部抵抗があり、電池の外部には負荷となる回路が接続されています。

 

オームの法則から

 E = r x i + R x i

 ですから

 負荷に与えることのできる電圧(ER)は

 ER = E – Er = E – r x i

 となります。この内部抵抗は使用時間が長くなるにつれて増加していきますので、負荷に供給することが出来る電圧 ER は減少することになります。

 

アルカリ電池等の場合、公称出力電流は発表されていませんが単3型で大体800mA/hから900mA/hと推定できますので、負荷電流は80mA90mAと見て、終止電圧1.2Vに達しているかどうかは次の式で判断できます。

 

i x R = ER

 0.08(A) x R = 1.2(V)

 R = 1.2 ÷ 0.08

 R = 15(Ω)

つまり、電池に15Ωの負荷を接続して、負荷の両端電圧1.2V以上あれば良品、1.2V以下であれば衰弱品と判断できます。

テスターの電圧測定モードで直に電池の電圧を測った場合は、電流が殆ど流れないので内部抵抗による損失が表面化しないため、古くて弱った電池でも起電力どおりの電圧(1.5V)を表示することになり、良否判断が出来ないと言う事になります。

 

テスターの内部抵抗は安物のアナログ式(針式)のもので15KΩ/V程度ですので電池程度では殆ど電流は流れません。流れるようですと測定値の誤差が大きくなることと被測定回路に影響を及ぼしますので測定器として使えません。ディジタル式のテスターの入力(内部)抵抗は安物でも数MΩありますから電流は流れないと言い切っても間違いはありません。

 

従って、テスターの電圧レンジでは電池の良否は判断できません。

テスターで直に測って1.2V以下の場合は起電力そのものが低下していますのでその電池は使用できないと判断できます。