9.バイポーラ・トランジスタ

 

バイポーラ・トランジスタまたはバイポーラ・ジャンクション・トランジスタ(BJT)は、トランジスタの一種です。N型とP型の半導体がP-N-PまたはN-P-Nの接合構造を持つ3端子の半導体で、電流増幅やスイッチングなどの機能を持ちます。

 

電界効果トランジスタなどのユニポーラトランジスタと異なり、電荷を伝導するための正孔と電子という正・負両極のキャリアをもつためバイポーラと呼ばれています。

 

バイポーラ・トランジスタという言い方は、後に電界効果トランジスタが登場したことにより、それと弁別する必要があったためですが、最初に広く使われたトランジスタがバイポーラだったので、単にトランジスタと言えば大体の場合バイポーラ・トランジスタを指します。

 

 

 

1.特 徴

 

小さなベース電流を与えると、その数十から数百倍のコレクタ電流が流れます。この基本的な性質がトランジスタに増幅と言う機能を与えています。

 

ベース-エミッタ間はダイオードと同じ構造であるため、ベース電流を流すためには、ベース-エミッタ間電圧を、閾(しきい)値より大きく保つ必要があります。この閾値を、接合部飽和電圧と呼び、シリコントランジスタの場合、室温で0.6~0.7ボルトになります。また、スイッチング動作をさせる場合には、この閾値を利用して回路の設計をします。

 

バイポーラ・トランジスタの動作はすべて電流モード(入力電流に対して出力電流を得る)であるため、全体として動作時に消費する電力量は大きくなります。このため、大電力を扱う際には、電圧モード(入力電圧に対して出力電流もしくは出力電圧を得る)の電界効果型デバイス(真空管やFETなど)に比べると大掛かりで、損失も含めると不利になります。微小信号の増幅についても、まず入力信号が閾値を超えるレベルでなければならないこととトランジスタを動作させるだけの電流を与えられなければ増幅機能は果たせないということになります。

 

スイッチング素子としては、少数キャリア蓄積効果のため、本質的に動作速度に限界がありますが、スイッチのON/OFF制御信号として電流さえ流せれば電圧は接合部飽和電圧(一般的なシリコントランジスタで上記0.6-0.7V)しか必要としないため、電圧に制約のある用途では扱いやすいとも言えます。

 

極端な大電力や高周波などを除けば、高い増幅率や優れた量産適性で非常に廉価に入手できることから、民生・産業・航空宇宙・防衛の全ての分野で幅広く利用されている電子デバイスです。

 

2.種 類

(1)PNPNPN

3本の端子はそれぞれエミッタ(E)・ベース(B)・コレクタ(C)と呼ばれます。P-N-PまたはN-P-N3層構造の中央がベースになります。EBC端子は真空管のカソード・グリッド・プレート、電界効果トランジスタ(FET)のソース・ゲート・ドレインに対応しています。

実際の素子の端子は、日本製の一般的な汎用トランジスタでは、端子を下に向けて正面(よく使われていたTO-92パッケージでは品番などが書かれている平面の側)から見て左からECBとなっているものが多いのですが、外国製のトランジスタでは、これとは異なる端子配列の品種も数多くあるため、使用に当たってはデータシートなどで確認する必要があります。

それぞれの極に使われている半導体の特性から、NPN型とPNP型に区分することができます。NPN型とはN型半導体-P型半導体-N型半導体の順に、PNP型とはP型半導体-N型半導体-P型半導体の順に接合(PN接合)したものです。原理図的には対称形と言えますが、実際にはエミッタ側の半導体の不純物濃度を高くしなければ正常な動作ができません。実際にもトランジスタのエミッタとコレクタを逆に接続すると、一応は増幅作用を見せるものの一般にトランジスタに期待されるような能力は発揮できません。

エミッタ-コレクタ間の逆方向の耐圧は低く、耐圧ぎりぎりの電圧を掛けた場合は劣化することもあるとか、逆方向での使用は破壊の要因になることもありますとメーカーが注意している例もあります。

 

ゲルマニウムを用いた初期(1970年代まで)のトランジスタは、NPN型に比べて製造が容易であったため、PNPトランジスタが多く作られました。素材にシリコン用いられるようになってからは、一般的に動作が高速で、増幅率、耐電力などの特性に優れたNPNトランジスタが主流になっています。

 

真空管と異なり、トランジスタに特徴的なものに、コンプリメンタリ・ペアと言うものがあります。

コンプリメンタリ(相補的)・ペアとは、それぞれで極性が反転している他は、特性の似たNPNPNPのトランジスタの組で、たとえば2SC18152SA1015というペアがあります。このような組み合わせで増幅回路を設計する場合、NPN型のトランジスタが対象とする信号の正の部分の増幅を受け持ち、PNP型のトランジスタが負の部分の増幅を受け持って結果的には両方で一つの増幅機能を果たすということが行われます。実際にはキャリアが電子と正孔とで異なる以上、完全に等しい(完全に対称的な)ものは原理的に作れませんが、回路的には極めて簡単に構成することが可能になります。

コンプリメンタリ・ペアを利用する回路としてプッシュプル増幅回路の一種のSEPPSingle Ended Push-Pull)回路が挙げられます。

全てのトランジスタに、コンプリメンタリ・ペアとして対応するトランジスタがあるわけではありません。コンプリメンタリ・ペアが存在する場合は、その型番がデータシートに記載されています。

 

(2)製法による分類

トランジスタの項で述べたように物理構造や製造方法により、点接触型、接合型(合金型、成長型、メサ型、プレーナー型など)に分類されます。トランジスタの発明の初期の点接触型以外は全て接合型で、接合型の開発によってトランジスタは安定的な動作をし、実用の用に供されるようになりました。

現在では写真技術の応用によって微細なパターンをシリコンの薄板(シリコンウェハ)に焼き付けて作るプレーナー型トランジスタが主流となっています。

 

3.定格

電気的特性・条件を示す項目として、次のような項目が主に用いられます。

(1)hFE(直流電流増幅率)

エミッタ接地回路に使用したときのベース電流に対するコレクタ電流の比率です。一般にコレクタ電流をどんどん増加するようにベース電流を流していくとコレクタ電流/ベース電流の値がある値で最大となり、それ以上のコレクタ電流では低下します。また、この比率は周囲温度が上がると上昇します。

同じ型番でも個々の製品ごとの差が大きいため、ランクが付けして増幅率の値を示すことが多いです。

一般的には50-400程度の比率となります。

ゲルマニウムトランジスタでは漏れ電流(何もしなくても流れる電流)が大きく、直流での正確な増幅率を測定することが困難なため、交流信号に対する増幅率hfeで表記されることがあります。増幅回路における電圧増幅度は負荷抵抗によって決まるため、hFEの大きなトランジスタを用いれば増幅度が大きくなるとは限りません。

ただし、hFEの大きなトランジスタを小電流で動作させると高い入力インピーダンスが得られ、雑音も少なくなるという特徴があるため、オーディオ用アンプなどではhFEが高く低雑音のトランジスタが多用されます。

(2)VBE(ベース-エミッタ間電圧)

冒頭の説明にもあるように、ベース-エミッタ間のダイオード接合を乗り越えて、ベース電流を流すために必要とされる電圧です。通常、シリコントランジスタでは0.6V前後となります。VBEはコレクタ電流が増加すると少しずつ上昇し、周囲温度が上がると下降します。ただし、コレクタ電流が増加するとトランジスタは発熱するため、結果的にはコレクタ電流が増加するとVBEは下降していきます。このことは、バイポーラ・トランジスタが熱暴走※する原因でもあり、回路設計上はこれを考慮に入れて設計する必要があります。

※熱暴走:一般に金属はその温度が上昇すると抵抗値が増えますが、半導体は温度が上昇すると抵抗値が減るという特性を持っています。バイポーラ・トランジスタの場合はコレクタ電流が増える→発熱量が増える→ベースーエミッタ間電圧が低下する→ベース電流が流れやすくなって増加する→ベース電流が増加するのでさらにコレクタ電流が増える→さらに発熱量が増える、という循環になるため電流の増加と発熱が止まることがなく、結果としてトランジスタを破壊するまで続くことになります。この事象を熱暴走と言います。

(3)fT(遮断周波数、トランジション周波数)

いくら頑張っても増幅率が1しか取れない周波数を遮断周波数:fT と言います。

使用する周波数に対して十分に余裕を見て選定します。ただfTはコレクタ電流に対して依存性があり、あるコレクタ電流の時に最高となります。

先に説明した2SC1815-Yの場合、データシートではfTが最低80MHzhFE100とされていて、この場合適用できる周波数f

すなわち低周波領域と言うことになります。データシートにも低周波増幅用とされています。

但し、同じデータシートのfT-IC表によれば、コレクタ電流3mAにおいてft=250MHzとなっていて低周波領域のみならずある程度の周波数領域でも適当な増幅が期待できることになります。

4.最大定格

 

また、電気的条件の許容値(最大定格)が定められており、これを超える条件で使用してはなりません。

 

この最大定格は通常、物性論的見地から定められているため瞬間的にも超えて使用してはいけません。

 

この位は良いだろうは通用しない世界です。

 

最大定格としては主に次のような項目があります。

 

(1)VCEO(最大コレクタ電圧)

 

ベースを開放した場合に、エミッタとコレクタ間に加えることのできる最大の電圧です。これを超えると接合部がなだれ降伏を起こし破壊されます。この電圧を使用できる電源電圧の基準にします。エミッタを開放した場合にベースに加えられる最大電圧はVCBOと表記され、VCEOより若干大きな値となります。

 

(2)IC(最大コレクタ電流)

 

コレクタに連続的に流すことができる電流、もしくは実用に耐えうる増幅率が得られる最大のコレクタ電流です。パルス状の信号であってもピークで越してはいけません・

 

(3)PC(最大コレクタ損失)

 

トランジスタ内部で許容される最大の電力損失です。周囲温度は25℃を基準としているため、それより高温の場合は値が低下します。中・大型の品種は、規定の放熱器を取り付けた場合の値で示されており、それより小さな放熱器を用いる場合には最大コレクタ損失の値が低下します。最大コレクタ電圧と最大コレクタ電流を同時に加えると最大コレクタ損失を大きく超えてしまいますので注意を要します。

 

バイポーラ・トランジスタは非常に約10,000種類と種類が多いのですが、古い製品の多くが生産終了となっており、さらに個人が使う場合は一般に出回っているトランジスタが全体のごく一部の種類だけであることもあって、必要な型番の製品が入手できないことがあります。その場合は、定格値が近い製品を代替品として用いれば事が足りることが多く代替品種を示した専用の規格表もあります。

 

 

 

5.形状

 

トランジスタのチップそのものはごく小さいものです。おもちゃなどに使われている現在のトランジスタのチップはサイズが1mm以下の細片でこれをそのまま使うことは環境的な問題(酸化、水分、放熱、汚染など)を含めて極めて難しいことになります。また電極の引き出し線などもきわめて細い線(ミクロンオーダー)になるためこれの保護も必要です。そのため、パッケージの中に封入してあり、これが一般的に見ることのできるトランジスタと言うことになります。

 

パッケージには一応規格があり名前も付けられています。なぜ一応というかというとある程度共通して使用される規格(これも複数あり)と自社規格が入り乱れているためです。

以下一般的なものをご紹介しますが見たこともない形のものもあると思います。

 高周波用トランジスタの中には回路との適合性を重視した形状になっているものもあります。

形状名称 参考画像&名称

SC63

SC64

SC65

SC66

ハイパワー用のパッケージ

リードの反対側に放熱用のフランジがあります。一般的にはフランジにコレクタが接続されているため絶縁措置が必要となります。

メーカーによって別名称(TOタイプ)になります。
SOT23

別名称SC74A

小型のパッケージとして一般的

表面実装用のためリードもそれに合わせて設計されています。

TO1

TO72

円筒型金属CAN

初期の高周波用トランジスタはこの形状が多い

シールドを接地するため足が4本ある。

TO72: 2SC253

TO5

TO12

TO8

TO33

TO39

金属CAN

足は通常3本だが、ケースから直に足が出ているものもある。

TO39: 2SC322S278

TO8: 2SC932SC94(やや大きめ)

TO3

TO66

金属CAN

ハイパワー用

足は2本(ベースとエミッタ)、コレクタがケースに接続されているものが多い。
TO92

プラスティック

小型トランジスタのパッケージとして一般的

2SC18152SA1015もこの形
SC51

トランジスタのパッケージとして一般的

縦に長いパッケージになっています。

別名称TO92-L

この二つはコンプリメンタリの特性を持っています。
TO3P

プラスティック/セラミック

リードの反対側に放熱用のフランジがある。

一般的にはフランジにコレクタが接続されているため絶縁措置が必要となる。

ハイパワー用
TO220

リードの反対側に放熱器が取り付けられている。この画像は2SC4148だがフルモールドと言って放熱用フランジがパッケージの中にモールドされており、放熱板との絶縁は気にしなくてもよい

2SC1237は金属のフランジが背面全体に埋め込まれていてヒートシンク(放熱板)に熱を逃がしやすくなっている。

ただし、2SC4148とは異なり取り付けには絶縁板が必要です。

TO50

 

CASE 211–11, STYLE 2

高周波増幅用のためプリント基板(マイクロストリップライン)に実装しやすいようにリードが引き出されている。

2SC33582GHz位までの小信号増幅用

MRF255VHF電力増幅用のFETで放熱のためヒートシンクへの取り付け用スタッドや電極が幅広く設計されている。

     ダーリントン接続

2個のトランジスタを、コレクタを並列に接続、第1トランジスタのエミッタを第2トランジスタのベースに接続して、1個のトランジスタと同じように扱う方式をダーリントン接続 (Darlington transistor)と言います。全体のhFEはそれぞれのトランジスタのhFEの積となります。つまり、非常に小さなベース電流で非常に大きなコレクタ電流を制御することが可能となります。2つのトランジスタの品種は同じである必要はありません。

トランジスタが発明された初期の頃は、PNP型の大型トランジスタを作ることが困難であったため、PNPの小型トランジスタとNPNの大型トランジスタをダーリントン接続として、全体としてPNP型と同じ動作をさせることが行われました。PNP型の大型トランジスタが出現してからは、個別部品でこのような接続をする必要は無くなりましたが、集積回路の内部では増幅率の大きなPNP型トランジスタを作ることが困難であるため、この方式が用いられています。

 

また、一般にパワートランジスタは小信号用トランジスタと比べ増幅率が低いため、高い増幅率が必要で大電力を扱わなければならない場合はダーリントン接続が使われます。TO92パッケージの汎用トランジスタはhFE100300程度ありますがハイパワー用のトランジスタは2050程度しかありません。このようにダーリントン接続すればそのhFE2000115000となるため10μAのベース電流で1A以上のコレクタ電流を制御することができるようになります。

 

ダーリントン接続したトランジスタを1個のパッケージに収めた品種もあります。型番の命名規則は単体のトランジスタと全く同じであるため、ダーリントン接続であるかは規格表やデータシートを見なければ分かりません。

 

通常、単にダーリントン接続といった場合、いずれのトランジスタにも同じ接合タイプ(NPN或いはPNP)のトランジスタを使ったものを指し、この接続方法では全体でのVBE2つのトランジスタのVBEの和になる。

 

一方、先述の大型PNP代用ダーリントン・トランジスタの例のように、NPNPNPの両方のトランジスタを使ったものはインバーテッドダーリントン接続と言います。この場合は第1トランジスタのコレクタを第2トランジスタのベースに接続し、第1トランジスタのエミッタと第2トランジスタのコレクタを並列接続して全体ではエミッタとします。第2トランジスタのエミッタは、全体ではコレクタとなります。全体での接合タイプは第1トランジスタの接合タイプと同じになり、ベース-エミッタ間電圧も第1トランジスタのベース-エミッタ間電圧のみになります。hFEは通常のダーリントン接続と同様に増加します。ただし、全体のコレクタ-エミッタ間飽和電圧は、第1トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧と第2トランジスタのベース-エミッタ間電圧の和になるため、スイッチング用として動作させると損失が増加する欠点があります。

 

また、hFEが非常に大きいため動作上クリチカルな場合もあり使用には注意が必要です。

 

このほか、ダーリントン接続なしで極めて高いhFEを持つトランジスタもあり、スーパーベータトランジスタと呼ばれます。スーパーベータトランジスタのhFE10003000以上と非常に高くなります。ただし、スーパーベータトランジスタはほとんど全て小信号用NPN型であり、最大コレクタ電圧が低いという欠点があります。

 

6.使用上の注意

(1)足の配置

日本製のバイポーラ・トランジスタのうち、TO-92(おもちゃの修理でお目にかかる代表的な外形)と言う形の場合はマーキングが書かれている平らな面を手前にして、足は左からE-C-Bとなっているのが普通ですが、中にはE-B-Cとなっているトランジスタがあり、交換等の場合は注意が必要です。

参考図の2SC3510UHFまでの広帯域増幅器に使われるトランジスタですがエミッタを接地してシールドの役割を持たせ、入出力を分離するため足の配列が通常の物とは異なっています。そのため、足の配置をマーキングして分かりやすいようにしています。

海外製の場合は基本的に日本製とは違っています。日本製と同じ名称でも足の配置は違っている場合が多いため注意して下さい。

さらに、おもちゃの世界ではよくお目にかかる80508550は同じ名称でも製造元によって規格自体が違っている場合があるのと、もちろん足の配置も違っている場合が多いので要注意です。

 

(2)代替品

おもちゃの修理或いは古い家電製品をする場合に一番困るのは、トラブルの原因が“あるトランジスタ”であると特定できたにもかかわらず、当該トランジスタが生産中止(オタクの世界ではディスコンと言う)になっていて入手できないと言う問題です。殆どの場合はインターネット等を探せば代替品が見つかるのでそれを使うことになります。見つからない場合は、自力で何とかするしかないので、規格表などを調べて探すしか方法はありません。ですが先ほど述べたTO-92タイプの場合はモーターなど大きな電流の制御をする場合以外は2SC1815のような汎用のトランジスタを使い、運を天に任せて、エイヤッとやって、結果が良ければOKと言う世界に入り込むということになります。いずれにせよ経験と勘が運を左右する世界ですので日頃から勉強しておくことが大事です。

 

(3)放熱

中・大型のトランジスタで金属製のパッケージに収められている品種は、電極端子以外の金属部分は原則としてコレクタ(一部の高周波電力増幅用はエミッタ)に接続されています。そのため、放熱器・放熱板を取り付ける場合には、それらとの絶縁を必要とする場合があります。

また、4(3)で述べた最大コレクタ損失(Pc)は中・大型のトランジスタでは適切な放熱板が取り付けられていることを前提としている場合が殆どですので裸(単体のまま)では大きな負荷は与えられません。

 

7.応用

バイポーラ・トランジスタは能動素子ですので、これを使用する場合は用途に応じた回路(エミッタ接地回路、ベース接地回路、コレクタ接地回路など)に組み込まれて使用されます。通常、増幅と言う機能を持たせるためには電圧増幅率、電流増幅率ともによいエミッタ接地回路が用いられます。詳しくは後述する増幅回路の項目を参照してください。

 

8.蛇足

トランジスタ類やICのプラスティック・パッケージは「レジン」と言うプラスティックで出来ています。

安価で大量生産が容易なため、特に信頼性を要求されない汎用のパーツには殆ど「レジン」が使われています。ただ残念なことに、「レジン」は僅かですが水分を吸収するため、長期間使用する或いは保管するとリードとパッケージの接続部分から湿気や錆が内部に進行し、それが原因でトラブルのもととなることがあります。リードの付け根が真っ黒になっているものは新品(長期保管品)でも使わないほうが良いでしょう。

軍用や宇宙産業用の特に高い信頼性を要求される分野においてはパッケージにセラミックを使用したり、リードに金メッキを施して酸化を防止することも行われています。

随分前の話ですが、2008年頃に三菱化成水島工場が爆発事故を起こして「レジン」の製造が出来なくなったことがありました。驚くべきことに三菱化成水島工場製の「レジン」の当時の世界シェアは99%を超えていました。トランジスタやICの製造が出来なくなると言って大騒ぎしたことがあります。

 

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