解った気がするトランジスタ回路の設計

 

皆さんが「おももちゃ」を診察する時に回路の中でトランジスタが多く使われていますが、何となくトランジスタの働きは解っているが、”なんで此処にこの抵抗が入っているのか? ”  ”このコンデンサの役割は何か? ” 等疑問に思ったことはありませんか?

 そこで、トランジスタの増幅回路を設計することで何となく意味が理解できればと想います。

どんなに複雑な回路でも、基本は同じです。
トランジスタを5個や10個使うような回路が設計出来るようになる為には、まずトランジスタ1個(1石といいます)での設計が出来なければ無理ですよね。そして、トランジスタ1石の設計がちゃんと出来れば、その後トランジスタが増えても理解し易いと思います。だから、単純過ぎてつまらないと思うかもしれませんが、とても大事です。

 トランジスタ1石の回路を設計します。「たった1つで何が出来るのか?」「どこまで出来るのか?」っていうことです。
 

最初に決めるのは増幅回路の種類です。
トランジスタの基本的な増幅回路には3種類あって、それぞれ特徴があります。
 なお、昔は「接地」という言葉を使って「エミッタ接地回路」などと呼んでいたものを最近では(少し前から)必ずしも0VGNDが接地(側)というわけではない場合もあるということで、混乱を避ける為に「共通」という言葉で「エミッタ共通回路」などと呼んでいます。だけど初心者は余計に混乱しますよね。呼び方が違うだけだと思って正解です。
それでは3つの基本的な増幅回路です。
トランジスタには

「エミッタ(E)」

「コレクタ(C)」

「ベース(B)」

という3つの端子があり、

 

そのどれかを共通(接地)にして、あとの2つを入力と出力にするのです。

 

【エミッタ共通回路】
電圧利得も電流利得もバランス良くある程度稼げますので、電力利得が大きいです。
ゆえに、一般的によく使われています。位相が反転します。

【コレクタ共通回路】
電圧利得は1ですので電圧は増幅されません。電流利得が大きいです。位相は反転しません
エミッタ電圧が常に入力電圧の0.6V下にフォロー(連動)するので「エミッタ・フォロワ」とも呼びます。入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低くなります。

【ベース共通回路】
電圧利得はある程度あります。電流利得は1ですので電流は増幅されません。
位相は反転しません

 

 

つまり、どれを選ぶかは自由です。
ただ、1石の場合、または2石以上を組み合わせる場合の1段目には利得がバランス良く得られるエミッタ共通回路が良いでしょう。一般的によく使われているというのも納得です。
ということで、ここではエミッタ共通回路で説明することにします。

 

 

 エミッタ共通回路を使うということに決まりました
つまり、「ベース(B)」から入力した信号を増幅して「コレクタ(C)」から出力するわけです。
そこで、最初に「ベース・バイアス」というバイアスをかけます。
入力から入ってくる信号は、何もしていない状態であれば0Vを中心とした波形です。

(図1-4)上下を行ったり来たりする、交流的な信号です。

 

 

これを直流の世界へと入力するのです。トランジスタのベースから入力して、増幅してからエミッタ接地ならコレクタから出力されますから、そのコレクタ電圧の範囲(電位)の中心に波の中心が来るように、ベース入力の電位を決めます

このベース入力電圧が適切でないと、コレクタから出力される波形が上や下にはみ出てしまいます。はみ出た部分は波形がクリップしてしまい、音が割れたり、まともに鳴らなかったりします。

まともな音を出す為に、増幅度を充分確保できるように、適切な動作点に電位を設定するのです。

これが「バイアスをかける」という作業です。
入力された信号を増幅した段階で波全体が使える範囲内に収まっていれば、必ずしも使える範囲のド真ん中じゃなくても大丈夫ですが、最大限に活用するならば、波形の中心が(コレクタ電圧の)電位のド真ん中に来るようにすればよいですね。

 


このバイアスをかけるには、抵抗器を使ってトランジスタのベース入力の前の電位を決めるのですがそれには3つの方法がありますので自由に選びます。

【固定バイアス】
一番簡単で増幅度も一番高いのですが、hFEのばらつきがそのまま反映されてしまうのでその都度hFEを測定して抵抗値を計算しなければなりません。

(hFEとは直流電流増幅率の事です。 ベース電流とコレクタ電流の比の事です。 因みにhfeと”f”と”e”を小文字にすると交流電流増幅率になります。 例えば、IB=10μAIC=1.60Aの時、FE=1.60/10/1000=160 になります。)

【自己バイアス】
負帰還がかかる為、多少のhFEのばらつきを抑えることが出来ます。
動作が安定する分、固定バイアスに比べて増幅度は多少下がります。

【電流帰還バイアス】
自己バイアスよりもさらに安定します。これも固定バイアスに比べて増幅度は多少下がります。
動作が安定する分、ある程度(6V以上)の電圧と電流が必要です。
一番安定しているだけあって一般的によく使われています。

今回は動作が一番安定する「電流帰還バイアス」でやろうと思います。
一般的によく使われるし、性能も良さそうだし。

 

 

 

これで「エミッタ共通回路」の「電流帰還バイアス」というところまで決まりました。

 

次は電源電圧ですね。何Vの電源を使うかっていうことです。
例えば、色々な解説を参考で見ると、6Vであったり、12Vであったり、15Vであったりします。実に様々な電源電圧で解説されています。
そう。特に何Vじゃなきゃいけないって決まっているわけじゃないのです。
使うトランジスタのデータシートに記載されている最大定格を超えなければ良いのです。
例えば2SC1815の場合の最大定格は、コレクタ-ベース間電圧(Vcbo)が60V
コレクタ-エミッタ間電圧(Vceo)が50Vあります。
でもこれらはあくまでもトランジスタ自体の話であって、回路全体を考えると話が違ってきます。
 例えば、後で出てくることですが電源ラインにバイパスコンデンサを付けたいです。
使いたいのは100μFの電解コンデンサですね。容量の小さな電解コンだと耐圧50Vとか入手性も良いですが、100μFの電解コンって種類によっては耐圧16Vより上のものは入手しづらかったりします。
無いわけじゃないですけどね、まぁ使う部品の定格電圧も頭に入れて設計するということです。
なので、やっぱり出来れば16V未満、16Vギリギリじゃあれなので、15Vくらいに抑えたいですよね。それと、電流帰還バイアスだから6V以上は確保したいです。
つまり、6V15V程度が妥当だと思います。
一般の人は乾電池とかアダプターですよね。9Vとかの方が用意しやすいと思います。用意しやすい電源電圧にすることも重要です。
せっかくだから、どの本にも載ってない9Vでやってみましょうか。

 

 

 さぁ、ここからいよいよ計算が必要な設計に入ります。各抵抗値の定数を決めるわけですね。
 説明をする際には述べている部分が「どこの抵抗値か」「どこの電流か?」などが分かるように記号を用います。
一般的にはまず「抵抗=R」「コンデンサ=C」「電圧=V」「電流=I」で、
「エミッタ=e」「コレクタ=c」「ベース=b」です。
それらを組み合わせると「コレクタ電圧=Vc」「エミッタ電圧=Ve」「コレクタ-エミッタ間電圧=Vce」といったように各部の値を全て記号で表せます。
全ての記号は図に描ききれません。でももうここに載ってなくても分かりますよね?

最初に何をするかというと、エミッタ電流(Ie)を決めます。
いや、実は「どこの値から決めていくか」っていうのは本によって異なるというか本の著者によって異なるというか、設計の手順自体が本によってばらつきがあるのです。
おそらくそういうこと(本によって手順が違うということ)があるから、初心者は分かりにくいのだと思います。

 

エミッタ側に何mAの電流が必要なのかによってエミッタ抵抗値Reが変わるのです。
この電流の値が、抵抗値を決める裏づけになります

なので、なるべく全ての裏づけ、理由付けが出来るような手順で設計していきます。
その順番というのがエミッタ電流(Ie)からでいいのではないかと思います。

しかしながら、この電流は計算で捻出するものではなくて設計者が自分で決めるものなのです。
だから「あらかじめ決められている」ことが多いのです。
 そうすると、ゼロから設計する場合には計算で捻出する以外に
ちゃんとした裏づけをもって「その電流値に決める理由」を導かなければなりません。
このIeに限らず、そういう「値の決め方」をする場合にどこまで説明してあるかが、分かり易い本なのかどうかの境界かなと思います。
そして、現状ではそういうことは何冊かの専門書を読まなければならなくて、「全てこの1冊に書いてある」という本は無いのですね。

 

ここでの説明も、何か説明が足りなくて分かりにくい部分もあるだろうし、余計な話ばっかり書いて話がなかなか進まないこともあるだろうし人によって「分からないこと」「知りたいこと」「書きたいこと」が違うのだなと思います。

 一般的なトランジスタの場合、Ie30mA40mAくらいが周波数特性が良くなります。
しかし、だからといって「たかがラジオなどの音声信号ごときの低周波回路」でそんな電流を流しても電気を無駄に消費するだけです。
例えば乾電池を使うことも想定するなら、電池の消耗具合も考慮したいですよね。

 そこで、一般的には小信号の回路だとIeには0.1mA~数mA程度を流します。
求められる性能や用途や回路によっては10mAとか様々ですけど、ここでは Ie1mA とします。
計算がし易いからということもありますし、後で出てきますが「コレクタ損失Pc」に関わってきます。コレクタ損失が大きいとトランジスタの発熱量が多くなるのです。

①・・・ Ie1mAです。

次に、Vbeが変動することによってコレクタ電流を安定させるという回路の仕組みを生かすため、Reの電圧降下が最低でも1Vは欲しいです。ただし、あまりここが高いと増幅率に支障が出ます。

この回路の交流的な電圧増幅度(交流利得)は Rc÷Re で求められますので
Re
の値が大きいと増幅率が下がってしまうんです。

そこでReの電圧降下を2Vに設定しましょうか。つまり、Ve2V です。

②・・・ Ve2V です。

はい。①と②により、オームの法則( VI×R )が成り立ってReの抵抗値が求められます。

2V
1mA×Re
Re
2V÷1mA
Re
2kΩ
はい。Re2kΩ です。
 先ほど、電圧増幅度(交流利得)は Rc÷Re で求められると言いました。
そして、Re2kΩ というのが決まりましたから、増幅度を自分で決められます。

4
÷2なら2倍、10÷2なら5倍、20÷2なら10倍です。
つまり、Rc4kΩなら2倍、10kΩなら5倍、20kΩなら10倍ということです。

大きいことはいいことだ。出来るだけ大きくしたいです。が・・・

1.IeIb×Ic である。
2.トランジスタの性質上Vbeが常に0.6VなのでIbには微量の電流しか流れないので無視出来る。

 ということから、実質的に IeIc ということになり、Rcの抵抗値でVcが自動的に決まります。
で、回路図の記号を見れば分かりますが VccVc+Vce+Ve なんですね。
すると、コレクタ損失であるVce0だとしてもVeVcを足しても9V以内にしかなれないんです。
すなわち、この9Vの電源電圧ではVe2Vとした場合、Vc7V以下にしかなれないんです。(927

つまり、このままでは電圧増幅度が3.5倍以下のものしか出来ません。

 

うーん、ここはひとつ、せっかくだから9V5倍くらいにしたいよね。(対抗心)

 そうするとReVe)を下げるしかありません。
場合によってはRcVc)もギリギリですから波形がクリップする可能性もあります。

Rc
E系列で7kΩに近い下側の6.8kΩにして、Re1.2kΩにすれば、6.8÷1.25.66倍になりますよね。
そのかわり、Re1.2kΩにするとVe2Vじゃなくて1.2Vになるので、安定度は若干落ちます。
まぁこの回路の動作が不安定になるほどではないでしょう。
つまり、 Ve2V という設定を Ve1.2V という設定に変更します。

計算上はこれでいいので仮決定にしますが、あまり余裕がないのでここらへんは後でPspice(回路図エディタと回路シミュレータが一本になったソフトウエアで、回路図各部の信号波形を時間と周波数でシミュレートし、結果をグラフで見ることができる)という回路シミュレーターを使って波形を確認します。
場合によっては微調整します。

もしシミュレーターは使わないとか、あくまでも計算だけで設計するというのであれば素直にRc4kΩ、Re2kΩ で増幅度を2倍程度に抑えれば良いと思います。
もしくはここで引き返して電源電圧を上げてやり直すかですね。

ここではシミュレーターを使って、波形を見ながら判断したいと思います。
それには回路図を完成させる必要があるので、残りの定数も決めます。

 

 

ちょっとここで、どこまで決まったか見てみましょう。

さて、では残りのベース・バイアス部分のRb1Rb2、それと入力と出力のカップリング・コンデンサです。
まずはベース・バイアス部分から。

 Vbeが常に0.6Vであると先ほど言いました。
ということは、Rb2の電圧は Ve0.6V です。Ve1.2VにするならRb21.8Vになります。
あとはRb2に流す電流が決まればオームの法則が成り立って抵抗値が求まります。

バイアス(Rb2)に流す電流はベース電流の10倍以上は必要です。
トランジスタのhFE2SC1815100400くらいでばらつきがあります。
ランク分けして分類してますが、hFE180であれば Ib×180Ie ということです。
つまりIe1mAですから、Ib1mA÷1800.0055555・・・mA(≒0.006mA)になります。
ということは、最低でも0.006mA×100.06mA ですので、0.1mAにします。
オームの法則により、Rb21.8V÷0.1mA18kΩ です。
そしてVcc9VRb1Rb2で分圧してるのでRb2が決まればRb1も決まります。
Rb1
の電圧は、9V1.8V7.2V

Rb1
の抵抗は、Rb17.2V÷0.1mA72kΩ です。
実際に入手出来る抵抗器の値としては、E系列の近似値で75kΩですね。
もちろん33kΩと39kΩを直列にして72kΩを作ってもいいんですけど
元々の許容誤差があるからE系列というものがあるわけで、まぁご自由に

というわけで、はい。
Rb1
75kΩ 、Rb218kΩ です。

 

 残るのは入力と出力のカップリング・コンデンサです。
これは電気信号の中の直流成分をカットする役割です。
「直流は通さない」というコンデンサの特徴を利用するわけですが
それは断線させるわけじゃなくて「電位差が生じない、電位差を失くす。」というような意味であって、音声信号(交流)は通ります。

入力側(C1)では、入力信号の交流成分だけを取り出してから
直流的な電位はあらためて自分で作ります。それが先ほど設計したベースバイアスです。

出力側(C2)では、トランジスタを上手く使う為にかけたバイアスとか
増幅されて出力された信号の電位を戻して、電位差を失くした状態にします。

 なので、余談ですが2つの回路を結合させる場合に
「前の回路の出力コンデンサ」と「後の回路の入力コンデンサ」は
「直流をカットして電位差を失くし、交流成分だけを通す」という役割が同じなので
どちらか片方を取り払って1つにまとめることができます。

 

このカップリング・コンデンサの容量は自由に選んで構いません。
ただ、容量によって通す周波数が違うので音質に関わってきます。
容量が大きいほど低音を通します。
用途と好みによって決めていいと思います。
0.01
μF4.7μFくらいのものをよく見かけますね。

例えば、ゲルマニウム・ラジオのような微弱な電流は
入力(C1)に容量の大きな電解コンデンサを持ってくると、コンデンサに電気が溜まるのに時間がかかります。
0.1
μF以下ならすぐに音が出ますが、

1μFだと音が出るまでに23
4.7μF9秒くらい
10μF20秒くらい
47μFだと40秒くらい
100μFだともう音が出るまで待ってられない

このくらい、音が出るまでに時間がかかります。
出力側(C2)は増幅されてるので容量が大きくても大丈夫です。
ちなみにここでは、入力側を0.1μF、出力側を10μFにしました。

ここは実際の音を聞いてからカット・アンド・トライで好みの値を探すのでいいと思います。

ノイズ除去のコンデンサをつける
あと、電源ラインに100μFのバイパスコンデンサを追加します。

 

GNDには微量たりとも電圧をかけたくないからです。
完全な0Vじゃないと安定しませんので、直流を通さないようにするのです。

 

トランジスタのコレクタ端子のすぐ近くにコンデンサをつけて、片方の足をGNDにつなげてください。
ただし、Rcとコレクタの間に入れたら、増幅度が周波数特性をもってしまいますので、RcVccの間に入れてください。
これはバイパスコンデンサ(略してパスコン)と呼ばれるもので、直流電流に含まれているノイズを除去するために存在します。パスコンの値は、低周波だとコレクタに一番近いものは0.1μF電源付近に10μF程度をつなげます。
 また、無線機などの高周波回路であれば0.01μF0.1μFのセラミック・コンデンサを
基板上の一定の距離ごとに、能動部品のそばに追加します。積層セラミックが良いですね。
同じVcc-GND間でも10cm四方の大きさの基板に十数個も入れることもあります。

これで設計が終わりました。

トランジスタは2SC1815にしてありますが、
電源電圧が9Vの回路で最大定格を超えてしまうことは無いので一般的な汎用NPNトランジスタであれば何でも大丈夫です。
ただし、ゲルマニウム・トランジスタだとhFEがかなり小さいので、種類(型番)によっては動作しないかもしれません。

あとはコレクタ損失(Pc)による発熱は、回路の安定度だけでなく危険性の問題もありますので一応計算します。

Vcc
9VVc6.8VVe1.2V ですからコレクタ-エミッタ間電圧は9V6.8V1.2V1V
よって、コレクタ損失(Pc)は1V×1mA1mW です。

2SC1815
のコレクタ損失(Pc)の最大定格はデータシートによると400mWですから、
当然ですが、全く問題ありません。

 

 

では、これをPSpiceでシミュレーションして波形を確認します。

トランジスタは2SC1815にしてありますが、
電源電圧が9Vの回路で最大定格を超えてしまうことは無いので一般的な汎用NPNトランジスタであれば何でも大丈夫です。
ただし、ゲルマニウム・トランジスタだとhFEがかなり小さいので、種類(型番)によっては動作しないかもしれません。

あとはコレクタ損失(Pc)による発熱は、回路の安定度だけでなく危険性の問題もありますので一応計算します。

Vcc
9VVc6.8VVe1.2V ですからコレクタ-エミッタ間電圧は9V6.8V1.2V1V
よって、コレクタ損失(Pc)は1V×1mA1mW です。

2SC1815
のコレクタ損失(Pc)の最大定格はデータシートによると400mWですから、
当然ですが、全く問題ありません。

 

 

では、これをPSpiceでシミュレーションして波形を確認します。

トランジスタは2SC1815にしてありますが、
電源電圧が9Vの回路で最大定格を超えてしまうことは無いので一般的な汎用NPNトランジスタであれば何でも大丈夫です。
ただし、ゲルマニウム・トランジスタだとhFEがかなり小さいので、種類(型番)によっては動作しないかもしれません。

あとはコレクタ損失(Pc)による発熱は、回路の安定度だけでなく危険性の問題もありますので一応計算します。

Vcc
9VVc6.8VVe1.2V ですからコレクタ-エミッタ間電圧は9V6.8V1.2V1V
よって、コレクタ損失(Pc)は1V×1mA1mW です。

2SC1815
のコレクタ損失(Pc)の最大定格はデータシートによると400mWですから、
当然ですが、全く問題ありません。

 

 

では、これをPSpiceでシミュレーションして波形を確認します。

ここまでの説明でなかった1.2kΩのエミッタ抵抗の右側に100μの電解コンが付いてます。実はこれは回路の定数を変更することなく、バイアスも崩さずに増幅度を上げる裏技的なものです。
例えば抵抗器が2本あったとします。
その2本を直列にすると抵抗が増えて、並列にすると抵抗が減りますよね。
原理的にはそれと同じです。
コンデンサを並列につないでGNDにバイパスするんです。(エミッタ・バイパス・コンデンサと呼びます)
そうするとコンデンサは交流だけを通すので、交流的なインピーダンス(抵抗)だけが下がって
Ve
抵抗値を変更する事なく増幅度が上がるのです。
もちろんVeの抵抗値が変らないのでバイアスも変更しなくていいんです。

欲を言うと、「抵抗器+エミッタ・バイパス・コンデンサ」のセットで並列にすると
その抵抗値によって増幅度の調節もできるのですが、コンデンサだけが一番増幅度が高いし簡単です。

増幅度が足りないと思ったら追加もしくは取り外しができるようにしておくといいかもです。
多分あとで役に立ちます。
まぁ抵抗器なんかも全て取り外しができるようにしておいてもいいですよね。
ということで、今回の1石トランジスタの設計を「楽しい」と思うか「期待外れ」と思うかはそれぞれですが、これから、例えば、2石トランジスタ回路の設計をするにしても、今回の1石増幅回路の後に別の回路を追加するので、結局は今回の1石での設計が理解できてないとアレですよね。

 おそらくこういった回路の設計を理解するのに一番早くて確実な方法は
今回の設計や本に載っている設計の他にも自分で色々なパターンで設計してみることだと思います。
電源電圧や増幅度を変えたり、エミッタ電流を1mAから2mAにしてみたりとか。

また、トランジスタのhFEの個体差がどのように影響してくるかとか、
同じ電圧増幅度でも電源電圧が違うと実際の音の大きさにどんな影響が出るかなど
今回の回路とゲルマニウム・ラジオで実験してみたり、色々と遊べると思います。

参考文献︰定本 トランジスタ回路の設計

         ―増幅回路技術を実験を通してやさしく解説

      ︰http://www005.upp.so-net.ne.jp/guitarder/other/o-07-tr-01.html

 

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